ハツコイ
フラフラと会社を出て、目の前の公園に入った。




すると…




そこには、安原さんと…




「ゆ…ず……?」




あんなにも会いたかった“はず”の柚がいた。




会いたかった…はずなのに。




今は柚に会うのが怖いと思ってしまっている。




だけど、どうやらそれは柚も同じなようで…




ぽろぽろと涙をこぼしながら、うつむいていた。




「…安座間。」



安原さんが俺に近づいてきた。




…殴られるのかな。



はたまた、怒鳴られるのか。




…そう思っていたら。




「…非常階段で気を失っていたのを見つけた。とりあえずここへ連れてきて話を聞こうとしたが…ずっと泣いたままだ。だから俺は…何も知らない。」




「安原さん…」




殴られるか怒鳴られるかなんて、バカな予想をした自分が恥ずかしい。




こんな俺を、安原さんはまだ見捨てないでいてくれてる。




「頼むぞ、安座間。そろそろ俺も、この恋を終わらせたいんだ。それには、お前が倉科を幸せにしてくれないと困る。」




「……はい。」





ダメダメな俺。




危うく、同じ過ちを犯すところだった。




だけどもう二度と…柚を失うのは嫌だ。




安原さんが静かに去っていたのを見届け、俺は柚に近づいた。






「…柚。」



< 197 / 211 >

この作品をシェア

pagetop