ハツコイ
柚の肩がビクッと跳ねるのがわかった。




ごめんな。




そんな怖い思いさせて、ごめん。





「柚、話…聞いてくれる?」



静かに問いかけると、柚はようやく俺を見てくれた。





「柚に何があったか聞く前に、俺が芽衣と電話したことについて、話す。」



柚の瞳が揺れている。



俺があれこれ考えて隠し通したことなんて…




柚を不安にさせてまですることじゃなかったんだ。




「…芽衣は、俺の番号をシゲさんから聞いたらしい。それで、柚といるタイミングをわざわざ見計らってかけてきてた。電話は何度かかかってきたけど、実際に話したのは一度だけ。…だけど、そのことを黙ってたのは間違いだった。ごめん。」



俺の言葉に、柚は首を横に振った。





「…私こそ、ごめんね。琉偉は、別に隠し事してたわけじゃないのに。私にわざわざ話す必要がないから話さなかっただけなのに…芽衣ちゃんに言われた時、私の知らないところで繋がりが出来てしまってたことがショックだったの。」



「柚……本当にごめ…」





「琉偉を誰にも渡したくない…」




再び謝ろうとした俺の言葉を被せるように、柚は呟いた。




「芽衣ちゃんでも、他の誰でも。どんなに嫌なこと言われたって、琉偉を失うことに比べたら平気だもん。」




そう言って、笑顔を見せてくれた柚。




一緒だ。



俺たちは、一度別れを経験している。




だから、お互いを失うことがどれだけ悲しいことか、辛いことか…



よくわかってるから。




「ね、柚…?」




「ん…?」



俺の呼びかけに、顔を上げる柚。




「一緒に、戦おう。これからは、どんな些細なことも話そう。」



「うん。」




頷いた柚が、ベンチから立ち上がる。




「んじゃ、芽衣に一泡吹かせてやるか!………と、その前に…チャージ、いい?」



「え?……きゃっ!」




柚の腕を引き寄せ、華奢な身体を思いっきり抱きしめた。



さっきまで感じていた不安が、消えていく。




一人じゃダメダメな俺だけど。




柚と二人なら、何でも乗り越えられる。




そう思った。


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