ハツコイ
公園からの帰り道、柚が芽衣と話した内容を教えてくれた。



柚を抱いている最中にかかってきたあの電話を切ったつもりが、まさか繋がっちゃってたとは。



相手が女だったからいいものを、もし男が電話相手だったとしたら…




…いや、それが誰であろうと、柚のエッチな声聞かせたことに激しく怒りと後悔を覚えていただろうな。






それから…




「…芽衣ちゃんと話してるうちに、いつの間にか気を失ってて。それで気づいたら………安原さんが。ごめんね…。」



「いや、柚がどこ行ったか探してた時に安原さんから電話あって、助かったんだ。」




柚から安原さんの名前が出た途端、強がってはみたものの…



ついさっき、些細なことも話そうって決めたばかりだったことに気づく。






「柚…ごめん、嘘。安原さんから電話かかってきて、柚が安原さんと一緒だって聞いたのは本当だけど、その時…言われたことがある。」



「え?」



柚が立ち止まって俺を見上げる。





「お前が幸せにできないなら俺がもらうって…きっぱり言われた。」



「え…そんな……」



明らかに動揺している柚。




そりゃそうだよな。



柚が安原さんにきちんと断った時に、全てが終わったって思うよな。




だけど…好きな想いはそんな簡単に断ち切れるものじゃない。




それを、俺も柚もわかってるから…





だから、何も言えない。



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