ハツコイ

「倉科、資料ありがとう。」





上司である安原さんに頼まれていた資料を渡すと、爽やかな笑顔で微笑んでくれた。




「あ、いえ…」





心臓がドキドキして、その場を早く立ち去らないと音が聞こえてしまいそうで。




「では、失礼します。」





そう言って去ろうと思ったのに。





「待って、倉科。そろそろあの返事を聞きたいんだけど…」





そう安原さんに言われ、顔が熱くなった。





「あ、あの…明日でもいいですか。」




延ばし延ばしにしてるだけで結論なんて出ないけど…





もう一日考えさせて!!





その思いは伝わったようで、安原さんは笑いながら頷いてくれた。




「急がせてごめん。いい返事期待してるよ。」




ペコっと一礼し、自分のデスクに戻りふうっとため息をついた。



< 2 / 211 >

この作品をシェア

pagetop