ハツコイ
その問いかけに、芽衣ちゃんは思い出すように目を閉じた。



「もちろん、二度も告白するつもりはなかった。二人は学校で有名なカップルだったし、私もしばらくしたら琉偉くんへの想いは薄らいでいった。だけど修学旅行の時に、段差から落ちて足をひねったあたしを、琉偉くんが宿泊先までおんぶして送ってくれたの。着くまでの間、大丈夫かって声をかけてくれたりして。」



そんな芽衣ちゃんに、琉偉がようやく呟いた。




「あ…あの時の…?」



その瞬間、芽衣ちゃんの目に涙が溜まった。



まるで…琉偉が思い出してくれて嬉しいかのように。




私もその話は覚えてる。



修学旅行の帰りに琉偉から、怪我した子を宿泊先のホテルまで連れてったって聞いたことがあるから。



それが、芽衣ちゃんだったんだね。



「もちろん、琉偉くんと柚奈ちゃんがずっと付き合ってるのは知ってたし、別れるなんて思ってもなかったけど…でも、どうしてももう一度告白したいって思ったの。それで、卒業式の前日に…」




卒業式の前日。




それは、私たちが初めての夜を過ごした…翌日。



「琉偉くんにあたしをずっとずっと覚えていてもらうには、二度告白するってことしか思いつかなくて。それで、二度目の告白だって伝えて…気持ちを言った。だけど、一度目の時に優しくフってくれた琉偉くんの言葉は心に響いたのに、二度目の時は…ただ、付き合ってる人がいるからごめんって…それだけ。上の空っていうか、あたしの言葉自体届いてないような感じだった。」




それに対して、百合さんが琉偉を見てため息をついた。


「あんた、当時から女心のわからないへっぽこだったのね。」




すると、琉偉がふうっと呼吸を整えて言った。



「…卒業式の二日前だったんだ。初めて…柚を抱いたのが。」




その言葉に顔が熱くなったけど、芽衣ちゃんにはその意味が伝わったようで…




「あたしが告白した前の日…。だから琉偉くん、あの時心ここにあらずって感じだったんだ…。」




そう言って、笑った。


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