ハツコイ

異動初日から、容赦なく残業はやって来た。




相変わらず無口なあーみん似（実はまだ本人じゃないと疑っている）の課長補佐と数人は、黙々と仕事に取り組んでいる。




私も負けじと、目の前の仕事に取り掛かること、二時間超。





「それじゃ、みなさんも程々に。お先に失礼。」




突然立ち上がったあーみんは、その一言をボソッと呟くや否や、さっさとオフィスを出て行ってしまった。




「志賀さん、いつもあんな感じなの。どんな私生活を送ってるかもわからない、ミステリアスな女性、それが志賀さん。」




となりのデスクの社員がコソッと教えてくれた。




うーん…めちゃめちゃ普通の生活してますけどね。




「それじゃ、私もお先に失礼します。」




ダメだ。



初日から頑張りすぎると、後が持たない。




デスクの上を片付けて、オフィスを後にした。