ハツコイ

「さあ…どうだったかな。」



そう言った琉偉が、チラッとこっちを見た。




こっち見ないでっ!!




「倉科、モテそうだな。制服姿、可愛かっただろうな。」



やけにストレート発言な安原さんに、思わず赤面してしまう。




「ああ、それは可愛かったっすね。」



ケロっとした表情で答える琉偉。




「ちょ、ちょっと琉偉っ!!」




ますます赤面してしまう。



なんてこと言うのよ!!




「ははは、安座間最高!!」




琉偉の発言を、安原さんは冗談と受け取ったようで、楽しそうに笑っている。




「しかしお前ら、お互い名前で呼んで…ただの同級生って感じじゃないな。」




「あー…3年間クラス一緒でしたからね。クラスメイトは大抵名前呼びでしたよ?タケル〜とか、エリ〜とか。」




嘘つけっ!!



タケルくんやエリは、仲良かったからでしょうが!!



そもそも、エリのことは水樹って名字で呼んでるくせに。



…でも、今はその嘘に感謝。




「なるほどね。じゃあ倉科、俺も柚って呼んでいい?」




「え…?」




突然の安原さんからの提案。



エレベーターが一階に到着し、扉が開いた。




「柚って響き、可愛いよな〜。なあ、安座間?」



笑いながら先に降りて行った二人の背中に、聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で、多分無意識だったと思う…




「や……です…」




そう、呟いていた。


< 31 / 211 >

この作品をシェア

pagetop