ハツコイ
「え…?」
安原さんも、それから琉偉も。
驚いた表情で私を見ていて、ハッと我に返った。
「あ、あの…高校の同級生は柚って呼ぶんですけど、私…柚奈って響きが好きなので。できればきちんと柚奈と呼んでいただければ…」
「ああ…なんだ、そういうことか。じゃ、柚奈。また明日。」
不安そうな表情が一変、嬉しそうに微笑んだ安原さんが、私の名前をサラッと呼んで去って行った。
そして私も、安原さんと反対方向に歩き出す。
「ウソつきー。」
背後から声がした。
「誰もお前のこと柚って呼ぶヤツ、いないだろ。……………俺以外は。」
…悔しい。
すっごく悔しい。
琉偉はいつだって私の気持ちわかるくせに…
そうやって知らないフリするんだもん。
「だって嫌だったんだもん…。私にとってあの3年間は特別だった。ただ一人、柚って呼んでくれることが嬉しかった。だから…」
「柚…」
何言ってるんだろ、私。
まるで…
まるで、告白みたいじゃない。