ハツコイ
「俺もさ…嬉しかったよ、さっき。」
「え?」
シャーベットを食べ終わる頃、琉偉が呟いた。
「俺だけが柚って呼んでて、俺だけ特別な感じがして。柚って呼び方は、俺にとっても特別なものだったから。」
「あ、りがと…」
琉偉も、そんな風に思ってくれてたんだね。
「…つーかさ、安原さんて、すげえわかりやすく、柚のこと好きなの態度に出すよな。さすがの柚も気づいてんだろ?」
う…今その話するわけ?
「気づいてるっていうか…告白、されたし…」
「…………」
ちょ、ちょっと。
なんか反応しなさいよ!!
「だ、黙らないでよ…」
「あ、ごめん…。それで柚は、返事したの?」
「してないよ…。頭の中ぐちゃぐちゃで、返事しようって思った時に、るっ…」
言いかけて、はっとした。
返事しようって思った時に、琉偉が現れたから?
だから返事できなかった…
そう言おうとした?
「…まあ、あの人会社で人気なんだろ?男の俺からしても、デキる男って感じ。完璧な人だよ。」
だから何よ…
何が言いたいの?
付き合っちゃえって言うつもり?
「…琉偉には関係ないでしょ。」
「柚…?」
ベンチからばっと立ち上がり、ずんずんと歩き出した私。
「おい、柚っ…」
「これ、ご馳走様!」
嫌。
聞きたくない。
琉偉の口から、付き合っちゃえなんて、絶対嫌…。
こんなおかしな態度ばかり取る私に…
琉偉はどう思ったかな…。