ハツコイ
「風…気持ちいいよな。」
琉偉が夜空を見上げながら呟いた。
「うん、そうだね。」
「二階会の集まりで、こうやってビール片手にベランダで風にあたるってのが、最高に気持ちいいんだよなー。」
「あはは、わかる気がする。」
自然体でいてくれる琉偉に感謝だよ。
「…あの頃はさ、毎日毎日が楽しかったけど、こう…なんていうのかな。遠い未来を想像するとか、なかったんだよ。」
相変わらず夜空を見上げたまま、琉偉がポツリポツリと話し始めた。
「うん…」
「あの頃って、こういう毎日がずっと続くんだ…とか思ってたんだよな。今考えればそんな訳ないのにさ。」
琉偉…何を話そうとしてるの?
相槌も打てないまま、琉偉の言葉の続きに耳を傾ける。
「そうやって過信してたからかな………俺は柚を失った。」
そう言って、私を真っ直ぐに見つめてきた。
目をそらせないほど、真っ直ぐに。