ハツコイ

「風…気持ちいいよな。」




琉偉が夜空を見上げながら呟いた。




「うん、そうだね。」




「二階会の集まりで、こうやってビール片手にベランダで風にあたるってのが、最高に気持ちいいんだよなー。」




「あはは、わかる気がする。」





自然体でいてくれる琉偉に感謝だよ。




「…あの頃はさ、毎日毎日が楽しかったけど、こう…なんていうのかな。遠い未来を想像するとか、なかったんだよ。」




相変わらず夜空を見上げたまま、琉偉がポツリポツリと話し始めた。




「うん…」




「あの頃って、こういう毎日がずっと続くんだ…とか思ってたんだよな。今考えればそんな訳ないのにさ。」




琉偉…何を話そうとしてるの?




相槌も打てないまま、琉偉の言葉の続きに耳を傾ける。




「そうやって過信してたからかな………俺は柚を失った。」





そう言って、私を真っ直ぐに見つめてきた。





目をそらせないほど、真っ直ぐに。



< 40 / 211 >

この作品をシェア

pagetop