ハツコイ
「琉偉…」
「柚のこと、何もかもわかってるって思ってた。通じ合えてる、信じ合えてる…エスパーじゃないんだから、そんな訳ないのに。そんなバカなこと思ってた。」
張り詰めた空気の中。
息を吸うことも忘れそうなくらい、私は何もできないまま、何も言えないまま、ただ琉偉を見上げた。
「だから、大学入って遠距離になって連絡取らなくなって…。それでもどこかで、大丈夫だなんて思ってたんだよなぁ。今ならわかるのにさ。ちゃんと電話やメールすれば、柚は安心できたのにって。」
そんな琉偉の後悔は、私の後悔でもある。
「でも、それは私だってそう。どこかでね、強がってたんだと思う。琉偉から連絡くれる数が減って来た時、自分からばかり連絡してたら、いつまでも琉偉に依存してばかりの弱い私になっちゃうって…。一人でも平気だって…強がりたかった。寂しかったのに、寂しいって…言えなかった。」
さっきよりも冷たい風が、私たちの間を吹き抜ける。
「そっか…。それで結果、自然消滅かぁ。」
冗談めかして笑う琉偉に、私は笑うことが出来なかった。
あの頃に戻りたい。
今、強く思った。
「なあ、柚?」
「ん?」
琉偉が、片手に持ったビールをぐいっと飲み干した。
「……安原さんと付き合うの?」
じっとこっちを見つめる琉偉。
目をそらせない私。
もはや、夜風の冷たさなんて感じないくらい…
身体中が熱くなっていた。