ハツコイ
「柚、食べていいよ。」
そう言って、琉偉は私にシャーベットを渡してくれた。
「ありがと。でも琉偉…琉偉の方がこのシャーベット気に入ってるんじゃない?」
「え?何で?」
ビールを飲みながら横目で私を見る琉偉。
「だって、この前久々に食べて美味しかったからって、こんなすぐ買い置きする?」
そう言って笑いながら、一口目を食べた。
爽やかなゆずの香り。
私も相当喉が渇いていたようで、次々と食べられちゃう程だった。
すると琉偉が突然呟いた。
「…嘘だよ。」
「嘘…って、何が?」
残り一口を食べる手を止め、琉偉を見る。
「それ。この前食べたの久しぶりじゃないんだ。本当はちょこちょこ食べてた。この味、思い出の味だから忘れられなくて。」
「そ…だったんだ…」
思い出の味…そう思ってくれてて嬉しいけど…
ますます混乱してきた。
「ね、さっきの続きなんだけど…」
この際だからと、本題を切り出そうとしたら…
「なんで麗華と付き合ってるのに、私には付き合うなって言うんだよ、って?」
「えっ…」
「図星?」
フフっと琉偉が笑うと、肩と肩がぶつかる。
「麗華とは付き合ってないよ。社内ではそういう噂も流れてるみたいだけど、二階会メンバーだけは、真相を知ってる。」
百合さん達が言ってた肝心なことって、このこと?
「じゃあ麗華さんは…」
内緒だぞ、と言って…
琉偉は、真実を話してくれた。