ハツコイ
「知ってる?麗華が副社長の推薦で秘書になったこと。」
「それは同期から聞いた…」
「…デキてんだよ、あの二人。」
「ええっ!?」
副社長と麗華さんが!?
それは確かに、公にはできないかも。
「麗華とは、マーケティング課の同期だったんだ。そのうち副社長の目に留まって秘書に引き抜かれて、麗華も副社長に惹かれた。だけど、そんなこと公にはできないからさ。麗華に相談されて、二人の関係がばれないように、誰かに何か言われたら俺と付き合ってるってことにすればいいって提案した。同期の助けになるならそれでいいと思ったんだ………柚と再会するまでは。」
「る…い……」
「柚に麗華とのこと勘違いされて、目が覚めた。このままじゃダメだって。だから、麗華には最後にしてくれってこの前言ってきたんだ。麗華のこと見かけたの、この前の二階会以来ないだろ?あの二階会の帰り、駅まで送っていく途中に全部話したんだ。」
そうだったんだ。
どうりで、今日は麗華さん来ないんだなって思ってた。
「でもさ、ようやく自分のことが片付いたと思ったら、今度は安原さんだもんな。正直焦ったよ、安原さん完璧すぎんだもん。」
だから安原さんのこと聞いてきたんだ…。
「正直、柚もまんざらじゃないのかなと思ってたんだ。そう思って、諦めようとした時に、お前が安原さんから柚って呼ばれるの拒否しただろ?だから、俺にはまだ入る隙があるって思った。」
「隙…だなんて…」
そんな隙なんて、元々ないんだよ。
だって私は…
「俺はずっと…10年前からずっと…」
私は、琉偉のこと…
「ずっと柚のこと、好きだった…」
涙が、頬を伝った。