ハツコイ

日誌を書き終えて、職員室にいる担任に届けた。



そして、下駄箱まで二人で歩く。




「安座間くんは、家どこら変なの?」




「え?あ、駅6つ先!!」




やばい、思わず見惚れてて声裏返りそうだった。




「私は5つ先だよ!結構近いね。」




うわぁー!!



嬉しすぎる。



だけど…





一緒に帰ろう、の一言がなかなか言えない。




何も言えないまま、下駄箱に辿り着いてしまった。




すると、倉科が呟いた。




「雨…」



その声に外を見ると、ザーザー降りの雨。



「傘持ってる?」




そう倉科に聞かれ、俺はとっさに考えて、言った。




「いや、持ってないんだ…朝晴れてたからさ。」





…カバンの中に、折りたたみ傘を隠したまま。


< 59 / 211 >

この作品をシェア

pagetop