ハツコイ
日誌を書き終えて、職員室にいる担任に届けた。
そして、下駄箱まで二人で歩く。
「安座間くんは、家どこら変なの?」
「え?あ、駅6つ先!!」
やばい、思わず見惚れてて声裏返りそうだった。
「私は5つ先だよ!結構近いね。」
うわぁー!!
嬉しすぎる。
だけど…
一緒に帰ろう、の一言がなかなか言えない。
何も言えないまま、下駄箱に辿り着いてしまった。
すると、倉科が呟いた。
「雨…」
その声に外を見ると、ザーザー降りの雨。
「傘持ってる?」
そう倉科に聞かれ、俺はとっさに考えて、言った。
「いや、持ってないんだ…朝晴れてたからさ。」
…カバンの中に、折りたたみ傘を隠したまま。