ハツコイ
「それじゃあ、一緒に帰ろう?」
そう言って、傘を差してくれた倉科。
「あ、りがと。」
今日の俺はツイてる。
好きな子と、相合傘が出来るなんて。
俺が傘を持ち、二人で校門を出た。
「あのさ、安座間くん…こんな事聞いていいのかわからないけど…」
帰り道の途中、さっきまで普通に話してた倉科が急に、うつむいて声が小さくなった。
「何?」
「あの、よくラブレター貰ってるの見るんだけど…返事、してるの?」
まさかの質問。
ど、どうしよう!?
この場でタケルに電話したいくらい、テンパった。
だけど…
隠したって仕方ない…よな。
ヒドイって思われたって仕方ない。
ありのままを伝えるよ。
だって俺は、倉科が好きだから。
「友達伝いに貰ったラブレターには返事はしてないかな。直接貰ったり、告白されたりしたことには、ちゃんとごめんなさいって断ってる。」
「断ってる…の?」
わわわっ。
相合傘してからは、お互い真っ直ぐ前を見てたから…
今初めて、至近距離で倉科と目が合った。
ドキドキして、すぐ目をそらした。
だけど…その気持ちとは裏腹に、俺は思わず言ってしまった。
「断ってるよ。俺…好きな人いるから。」
どうせなら、伝わっちゃえばいいんだ。
そんなヤケな願いを込めながら、そう呟いた。