ハツコイ
次の日、実家から最低限の荷物を運び出し、引っ越しが完了した。





「よしっ!!」




まさか一人暮らしを始めるとは。




家事全般、もっとお母さんに習っておけばよかった。




ため息をつきながら時計を見ると、夕方になっていた。




同じ会社の人間とはいえ…いや、むしろ同じ会社の人間だからこそ、ここはきちんと隣の住人に挨拶をするべき…だよね?




一通り片付けを済ませたところで、両隣の人に挨拶に向かった。





ーーピンポーン…




「はーい。」



扉から顔を覗かせたのは、30代くらいの女性だった。



「あの、今日から隣に住まわせて頂きます、倉科と言います。4月から企画部のデザイン課に異動になりました。」




「あ、そうなんだ!!私は神谷百合。私は総務部なんだけど、よろしくー。」




とても感じの良さそうな人で安心。



わからないことがあったらこの人に聞こう。




そう思い、次は反対側のお隣さんへ。




ーーピンポーン…




「……………」




留守…っぽい。




また明日来ようと、音沙汰のないドアから背を向けた時だった。







ーガチャ…




扉の開く音に、振り返ると……








「え…」







目の前にいたのは








あんなにも忘れられなかった、元カレだった。







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