ハツコイ
「私…高校時代に付き合っていた彼がいました。その人のことが大好きで、ずっとずっと一緒にいられるって思ってたんですけど…大学で遠距離になって、結局自然消滅。そんな別れたかどうかもわからない状態だったから、ずっと自分の中で彼への気持ちを終わらせることが出来なかったんです。だから、安原さんへのお返事も…こんなに遅くなってしまいました。」
「つまり…その彼への気持ちを整理できたってことかな?」
安原さんからの問いかけに、私はゆっくりと頷いた。
「はい。キッカケは簡単です。その彼が…再び私の前に現れたんです。」
その言葉に、安原さんがワイングラスを置いて私を見た。
頭のいい安原さんなら、もう“彼”が誰のことかはわかってるはず。
私と琉偉が高校時代の同級生ってことは知ってるんだから。
「最初は、ヨリを戻すなんて夢のまた夢だと思ってた。だけど、彼がどうして連絡を取らなくなったのか、私がどうして連絡しなくなったのか…当時のお互いの、お互いを想いすぎた結果だったんだって、再会して誤解が解けたんです。それで…」
「それで、安座間と?」
安原さんの言葉に、コクンと頷いた。
やっぱり、琉偉だってわかったんだ。
「すみません、安原さん。お気持ちはすごく嬉しかったんですが…」
そう言いながら安原さんを見ると、ワインをぐいっと飲み干し、私を見た。
「安座間かあ。どうりで君が僕になびかないわけだ、ははは。」
「や、安原さん…?」
「…あいつは男から見てもいい男だよ。顔良し、性格良し、おまけに仕事もできる。倉科が想い続けるだけあるよ。」
男から見てもいい男…
その言葉に、胸がジーンと熱くなった。
琉偉は、誰からも愛される人。
「自慢の彼氏…だな。」
そんな安原さんの問いかけに…
「…はい!」
笑顔で答えられる私がいた。