ハツコイ

いつもの私の合図。




酸素が足りなくなると、琉偉の服をキュッと掴むの。




そうすれば…





「…よかった。」




ほんの一瞬だけ、キスから解放してくれるから。



「よかったって…何が?」



そう問いかける私を再びぎゅっと抱きしめてくれる。



「ちゃんと俺のところに帰ってきてくれて。もちろん信じてたけど、安原さんと柚が並んで帰っていく後ろ姿見て、気が気じゃなかった。」



「琉偉…」




そんな琉偉を、私も力一杯抱きしめる。





「俺はこれまでもこれからも、柚しか好きにならない。」



胸がキュンとする言葉。




それに対して、私は何を返してあげられるのかな。





いつもなら、すぐまたキスをするはずの琉偉が、なかなか次の行動に出ないことを不思議に思いながら、私はそんなことを考えていた。




すると…





「柚…この前言ったこと、覚えてる?」




「え?」




ふと琉偉を見上げると…





真剣な眼差しで私を見つめながら、言った。




「安原さんにきちんと断るまで“その先はしない”って話…忘れてない?」




「……………!?」





「柚は今日安原さんに返事をした。無事解決した。つまり………“その先”に進めるわけだ?」




た、確かに言ったけど…




きゃー!!!!!




< 87 / 211 >

この作品をシェア

pagetop