初恋の行き先
「そんなこと航也に言われなくてもわかってるよ。死にそうなくらい辛いことがあったのよ。十年来の親友ならわかるでしょ。私が今どんな気持ちか」
「はあ?知らねーよ。お前が今どんな気持ちかなんて。俺が葵の気持ちわかったら気持ち悪いだろ―――」


やってしまった。
確実に地雷を踏んだ実感がある。
現に葵はジョッキを勢いよくテーブルに置き、ジョッキからビールがこぼれる。



ああ、徹夜だ。
明日は大事な商談なのに。


これから待ち受けるであろう惨劇を想像し、明日の商談が上手くいくことだけを祈りながら、俺の頬に向かってくる葵の手のひらだけを見つめていた。
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