いちばん近くて遠い人
「ハハッ。こんな真似事するなんてな。」

 私の口からストローを取り上げて、自分のと一緒にゴミ箱へ投げ入れた。

「変なこと言ってすみません。
 吸いたくなったりしませんでした?」

 フッと息を吐いた加賀さんが「南とのキスの方がいい」とキスをする。

「それに……。」

 言い淀む加賀さんに不安が押し寄せた。
 やっぱり何か……。

 顔を背け、腕で覆って口元を隠した加賀さんに不安を募らさせた。

「……なんですか?」

「南こそ咥えてる姿がエロかった。」

 背けた顔の目だけこっちに向けた加賀さんに怒る。

「もう!加賀さん!!」

 怒る私に笑って、それから急に真面目な顔で言った。

「今度、俺の話を聞いてくれる?」

 それはきっと、お兄さんや恭子さんとのこと。

「はい。」

 抱き寄せられて、もう一度キスをした。






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