いちばん近くて遠い人
 最後は落ち着いて話してくれた加賀さんが話を締めくくった。

「聞いてくれてありがとな。」

 優しく言った加賀さんが体を離す。

「帰るのなら何も言わずに帰って欲しい。」

「加賀さん……。」

 加賀さんの行動に切なさが込み上げた。

「俺は南にいて欲しいが強要はしたくない。
 こんな話を聞いて俺から……俺のことが嫌になったのならそれは仕方ないことだ。
 責めるつもりも南が自分を責めることもない。
 俺をここまで更生させてくれて十分……。」

 再び言葉を詰まらせてそれでも加賀さんは続けた。

「だから、南は南の幸せを……。」

 堪らずに再び抱きついて「もういいです。もういいですから。」と制した。

「あぁ。うん。うん………。」

 温もりを確かめるように腕を回した加賀さんにどちらともなくキスをした。


「今だけでいい。雅也って呼んで。」

 加賀さんがそっと首すじにキスをする。

「ネックレス似合ってる。」

 囁いた加賀さんは加賀さんからもらったネックレスにキスをして、それから父の形見の指輪にもキスをしてくれた。

 そして体にキスを落としながら優しく触れる。

「ほら。雅也って呼んで?」

「雅也……さん。」

「いいや、雅也。」

「雅也………。」

 満足そうに微笑んだ加賀さんが唇を寄せた。

「英里。愛してる。」







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