いちばん近くて遠い人
　警察に被害届を出してから事務所に戻った。

　事務所では美智さんが泣きそうな顔で待っていた。

「ごめんなさい。
　南ちゃんの旧友でモデルルームが見たいって言うから。
　加賀さんもいたし大丈夫かと思って。」

　抱きつかれてなんだか照れ臭い。

「実際、大丈夫だったんだ。
　気にするな。
　１人の時に襲われるよりずっといい。
　ツメが甘い奴らで助かったよ。」

　加賀さんがフォローしてくれた言葉は確かにそうだった。
　１人の時だったらと思うとゾッとする。

「警察に届けたとはいえ今日は１人にならない方がいい。
　ミッチーの家に泊まれるか？
　いや、女同士じゃ心配だな。
　俺のマンションに来るか？」

「おいおい。
　無神経なのか、天然のたらしなのか。
　南ちゃんを餓えた狼の家になんか泊まらせれないだろ。」

　武蔵さんが当然のツッコミをすると隼人さんも便乗して意見した。

「本当ですよ。
　加賀さんの方が危ないでしょ。」

　みんなから非難されて加賀さんは不満顔だ。

「俺が、助けたんだぞ。」

「それとこれとは話が別です。」

「息をするように女と寝てる奴に任せられるか。」

　日頃の行いが悪いせいなのに、ふてくされた加賀さんに「美智さんの家まで送って頂けると助かります」とお願いした。

「まぁ、それでいいなら。」

　こんなお願いで少しだけ機嫌を直した加賀さんにみんなで吹き出した。








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