いちばん近くて遠い人
16.言いたいことは
本当に送り届けてくれた加賀さんにお礼を言って美智さんのアパートにお邪魔する。
「南ちゃんがウチにいるなんて新鮮。」
嬉しそうにしてくれる美智さんにありがたい気持ちでいっぱいになる。
女同士でお泊まり会みたいな経験はもちろん皆無で、美智さんと一緒にご飯を作ったり、一緒にお風呂も入って。
夜、眠る頃に美智さんと恋話になった。
「実は私、ずっと付き合ってる人がいてね。」
美智さんの告白に「わぁいいですね」と感嘆の声を漏らした。
ノロケ話をたくさん聞いた後に、実はさ、もう1つ言っておかないといけないことが……と美智さんから切り出された。
「最初の頃に南ちゃんが噂話を気にしていたでしょ?」
「えぇ。」
急に雰囲気の違う話になって、なんだか違った意味で緊張する。
「実は南ちゃんが来る前にうちのメンバーにするのには賛否両論あって……というより、みんないい顔はしなかったの。
ごめんね。噂が噂だったし。」
私は首を左右に振った。
「いいんです。当たり前だと思います。」
事の発端は総務部で有名なカップルの彼の方が私のことを気に入ったらしくて、別れてしまったのが始まり。
彼女の方が私のせいだと怒って、私が彼を誘惑したと根も葉もない噂を立てた。
もちろん私は彼の方から気持ちを言われてもお断りした。
けれどそれもいけなかったらしい。
噂に尾ひれがついたのは、彼の方からも噂を立てられたからだった。
振られた腹いせに、誘惑されたのに彼女と別れた途端に振られたと吹聴したのだ。
真相はどうであれ、部の風紀を悪くしたという理由で異動が決まった。
表向きは花形の営業へ栄転という形で。
「南ちゃんがウチにいるなんて新鮮。」
嬉しそうにしてくれる美智さんにありがたい気持ちでいっぱいになる。
女同士でお泊まり会みたいな経験はもちろん皆無で、美智さんと一緒にご飯を作ったり、一緒にお風呂も入って。
夜、眠る頃に美智さんと恋話になった。
「実は私、ずっと付き合ってる人がいてね。」
美智さんの告白に「わぁいいですね」と感嘆の声を漏らした。
ノロケ話をたくさん聞いた後に、実はさ、もう1つ言っておかないといけないことが……と美智さんから切り出された。
「最初の頃に南ちゃんが噂話を気にしていたでしょ?」
「えぇ。」
急に雰囲気の違う話になって、なんだか違った意味で緊張する。
「実は南ちゃんが来る前にうちのメンバーにするのには賛否両論あって……というより、みんないい顔はしなかったの。
ごめんね。噂が噂だったし。」
私は首を左右に振った。
「いいんです。当たり前だと思います。」
事の発端は総務部で有名なカップルの彼の方が私のことを気に入ったらしくて、別れてしまったのが始まり。
彼女の方が私のせいだと怒って、私が彼を誘惑したと根も葉もない噂を立てた。
もちろん私は彼の方から気持ちを言われてもお断りした。
けれどそれもいけなかったらしい。
噂に尾ひれがついたのは、彼の方からも噂を立てられたからだった。
振られた腹いせに、誘惑されたのに彼女と別れた途端に振られたと吹聴したのだ。
真相はどうであれ、部の風紀を悪くしたという理由で異動が決まった。
表向きは花形の営業へ栄転という形で。