いちばん近くて遠い人
「最初の方に言ってた歳が近いと結婚を意識するっていうのは………。」

「お相手がどんな方かにも寄ると思いますが、普通は女性の方が結婚意識は高いですよ?」

「そっか……そうなのかなぁ。」

 何故だか意気消沈していく平井様に隼人さんが付け加えた。

「平井様、お見合いパーティー全滅なんだって。」

「早川さん!!言わない約束でしょ!」

 怒る平井様をなだめながら「南ちゃんとはもう会うこともないかもしれないんだから、聞きたいこと聞きましょうよ!」と開き直って勧めている。

 こっちこそ思いつかない発想………。

「そうだ。そうですね。
 実は私、女性を前にすると緊張して話せなくなるんです。」

「……………私も一応、女ですけど?」

 しまったっという顔をした平井様を見て、私と隼人さんは吹き出した。

「別に構いません。
 でも私はどうして大丈夫か聞いてもいいですか?」

「………はい。お綺麗な方なのにすみません。
 決して女性に見えないわけじゃないんです。」

「じゃ、どうして………。」

「喋る必要事項があれば、なんとか話せます。
 それで私が話したことに反応さえしてくれれば、調子が出てきて話すことも出来るんです。
 あとは隼人さんが固い敬語はって助けてくれたのも大きいです。」

「なんだ。答え出てるじゃないですか。」

 隼人さんが微笑んで指摘した。

「まず固い雰囲気が苦手なのでくだけた敬語でいいですか?と伝えるです。」

「それ、こっちも嬉しいです。」

 私も同意すると平井様は目を輝かせた。

「本当ですか?」

「あとは何が話したいか決めていく。
 平井様の好きなことの話がいいですね。
 その話にのってくれた人と話せばいい。
 のらない人はご縁が無かったと思って。」

「そんなんでいいんですか?」

 平井様は目を丸くした。

「誰とでも話を合わせようとしなくても、ただ1人を見つけたいんですよね?」

「ただ1人………。そうです!
 ただ1人です!」

 ただ1人……………。
 隼人さんの言葉が私の胸にも深く刺さった。





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