いちばん近くて遠い人
「恋愛相談……というより結婚相談所みたいだったね。」

 平井様の嬉しそうな顔を思い出して、ふふふっと笑う。

「本当に。
 でも喜んで頂けて良かったです。」

「でも失敗したなぁ。」

「何がです?」

 残念がる理由が分からない。
 何も失敗はしていないように思えた。

 すぐにでも契約しようとする平井様を止めたのは平井様の為を思ってだ。

「だってあんだけいい人だよ。
 次のお見合いパーティーは絶対に成功するって。
 それで新婚枠で加賀さんか、ファミリー枠で武蔵さんに取られるってオチ。」

 そんな風にわかれてたんだ。
 確かに得意分野がありそう。

「じゃ美智さんは単身女性枠?」

「そっ!
 もちろん僕がファミリーを担当することもあるし、はっきり決まってるわけじゃないんだけどね。」

「大丈夫ですよ。
 私なら結婚相手が見つかっても菓子折り持って隼人さんにお願いに来ますよ?」

「本当に〜?」

「えぇ。それで2人だし、子どもも欲しいからってもう少し広いマンションをお願いされるんじゃないですか?」

「あー。すごい!理想的。
 本当にそうなったら、僕と付き合ってくれない?」

「………まだ言うんですか?」

「ハハッ。冗談。」

 私は営業として独り立ちするのかな。
 そしたら何枠になるんだろう。

 そんなことを考えていた。









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