いちばん近くて遠い人
 周りに気づかれないように会社から離れたカフェで待ち合わせをした。
 加賀さんはいつもより早めに仕事を終えてくれた。

 忙しいと思うのに、照れるのやら嬉しいのやらでどういう顔をしていればいいのか困ってしまう。

 隣を歩く加賀さんに自然に手を取られた。
 今までの上司や同僚の立場とは違う行動にそれだけでも慣れない。

 その手を握られて指を絡められる。
 今までにない甘い雰囲気に早くも倒れてしまいそうだった。

「どうした?俺の顔に何かついてるか?」

 微笑んだ加賀さんに質問を投げられても首を横に振るくらいしか出来なかった。





< 95 / 129 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop