サーペンディス 天秤に架けられた少女
「うんっ。元気だよ」
かわいい。かわいすぎる・・・・・・。下ろしてポケットから皮袋を出す。
「ああっ!!」
ルイスが声を上げる。
「はい。いつもの」
手渡すと、ルイスが皮の紐を解こうとするのを止める。
「あのな、ルイス」
しゃがんでルイスと目線を合わす。
「おいたんな、遠いところに行かなくちゃいけなくなったんだ。それでしばらくの間、ここにこれなくなるんだ。だから、大事にたべるんだぞ」
ルイスが顔をしかめる。
「じゃあ、お砂糖漬け食べれない・・・・」
「いつもよりいっぱい入れてあげたから、大事に食べるんだよ」
「うん・・・・・。」
ルイスは魔法界で雪が降る前に咲く雪の花<スノー・フラワー>の砂糖漬けが好きだった。それで、いつも行く時には必ず持っていった。
俺は笑って、
「いい子だ」
頭をぐしゃぐしゃに撫でて、立ち上がり、親仁さんを見た。
「じゃあ、行くわ」
「達者でな」
親仁さんは葡萄酒の瓶を手渡した。
「ああ、それでは」
俺はドアを開け、来た道を戻っていく。雨は上がっていた。
「おいたぁぁん!!」
後ろからかわいい声がする。
俺は振り返らず、手を振った。思いっきり腕を伸ばして。
なんかかっこよく決まったじゃん、俺。
さて、用も終わったし、魔法界への荷造りを始めるか。
空を見上げる。ふと、気が付いた。静かに雪が降ってきた。
別れの雪か―――
俺は急いだ。魔法界へ。