夢見た場所に帰りたい
0.プロローグ
____二階堂菫子は美少女だった。

その肌はきめ細やかで雪のような白さ、唇は薄桃色。腰まである髪は濡れ羽色、纏めることもせず風になびかせている。すっと通った鼻筋に、黒真珠のような瞳は大きくぱっちりと開いており、縁取る睫毛は長く柔らか。笑えば頬が薔薇色に染まり、歩いた後からは優しいシャボンの香りがする。決して作っているものでない、鈴を転がしたような声は耳に心地よく、滑らかな発音で。その口調は彼女の背が高いからなのか、少し勇ましい。
勿論性格にも落ち度などはない。人を褒め、年長者を立たせ、遠慮なく自分の意見も必ず言う。完璧な美少女だった。

故に。
事件が起こった時には、誰もが信じることができなかっただろう。

____彼女が人を殺した、なんて。
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