秘密の約束。
チュンチュンチュンチュン……

鳥のさえずりが俺を優しく目覚めさせた。

腕の中には苺香がすやすやと眠っている。




────となりにいるはずのお父さんがいない。


どこに行ったんだ…。





俺は苺香をそっと椅子に移して、明け方の廊下を歩きだした。


まだ薄暗くあたりはあまり見えない。



もしかしたら、またお母さんの病室の前にいるのかもしれない。

俺は少し足を早めた。





その時───





「─────です」

「わかった」

「血圧急低下しました───」


ガラガラ…




俺の目の前で

運ばれているのはお母さん。

紛れもなく俺のお母さんだった。

また容態が悪化したらしい。お父さんは俺と同じく突っ立っていた。

祈る他、医者じゃない俺らはなにもできないんだ。
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