おもかげlover...〜最上級に最低な恋〜
佐藤くんがキッチンに入って、潤くんと佐藤くんが話始める。
2人は久しぶりに会ったような会話をしていて、初めて見るその光景がとても新鮮だった。
カウンターからチラチラとやり取りを見ていると、わたしの想像とは逆の2人がそこにいた。

わたしの想像では…


「おう!潤、久しぶりじゃん!こないださぁー……」

とボディータッチ多めな佐藤くん。

「おう!」と言って、ボディータッチにも動じずクールに微笑みながら相づちを打つ潤くん。


なんとなく想像していたこの感じとは真逆の事がキッチンで繰り広げられていることに驚いた。
潤くんのボディータッチと口数の多さ。
一方、びっくりするくらいクールな佐藤くんがそこにいる。
いつもとは違う2人に違和感しかなくて、実はあれが本当の姿なのかなと思ったりもした。

佐藤くんはタイムカードを押してバックヤードへ着がえに行った。

わたしは思わずキッチンの潤くんに聞いていた。

「佐藤くんっていつもあんな感じ?」


「だいたいあんな感じだと思う。なんかあった?」


「いや、まだ2…1回しか会ってないからさ。どんな感じなのかなぁって!」


まだ知らない姿があるのは当然でそれが新鮮で知りたくなっていく………
佐藤くんが着がえ終えて戻ってきたので、わたしは「上がりまぁーす」と声を掛けて内輪話で盛り上がる仲の良い2人の声を背に着がえに向かった。


カーディガンを脱いでエプロンを外して髪の毛をほどく。
鏡を確認しながら着がえを済ませるのがいつもの流れ。
バックヤードには裏口があってダンボールのゴミなどが山積みになっている。
裏口の大きなドアから入るすき間風が冷たくて着がえには向かない場所だなといつも思う。
「寒い寒い…」と、つい声が出て、買ったばかりのお気に入りのコートを羽織った。

「ん?」

思わず声が出たのは、ポケットに違和感を感じたから。

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