おもかげlover...〜最上級に最低な恋〜
「3700円ねぇ。はい、300円おつりね」


タクシーを降りて、数時間ぶりに戻ってきたこの場所。
車をどこに停めたのかも覚えていなかった。
アパートに着いたのは朝方で、気がかりはただひとつ。
佐藤くんは大丈夫だろうか…今日はわたしも佐藤くんも出勤で、佐藤くんの代わりをやまやまに頼もうかとも思ったけど…店長にも相談はせず、わたしがぶっ通しで夜勤もやることを勝手に決めた。


仕事に入るまで何度も携帯を確認していた。
潤くんから届くメールに返信もせず、佐藤くんからの連絡をひたすら待っていたけど、くるはずもなく…
店長が帰ったら、わたしから連絡してみようかな…でもお節介が過ぎるかなぁ…なんて過剰に考えてしまう。


「なら、今日もあとよろしくね」


と毎度の事、セカセカと帰った店長。



そして、携帯電話とにらめっこが始まった。
かける?かけない?かける?かけない?かけ…
チリン、と鳴った自動ドアの鈴の音。
まさかと思っていても期待してしまう。


そんな事ある訳もなく…お客さんの対応をしてご案内を終えると立て続けの来客に目を疑った。


「なっ、なにやってんの?」


震えた声で、マスク姿で立つ佐藤くんに駆け寄って、


「絶対来ちゃダメじゃん…」


今にも泣いてしまいそうだった。


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