おもかげlover...〜最上級に最低な恋〜
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「けいいち送ってすぐ帰った?」



また今日も早く出勤してくれたやまやまに、案の定聞かれた。
今は1人でいたいし、誰とも話したくない気分。



「帰ったよ」


いつものわたしならあり得ないくらいの低いトーンの雑な返答。



「なにイライラしてんだよ!笑
けいいち、やっぱお前の事好きだな」



「好きじゃない!誰もわたしの事なんて好きじゃなくていい!」



投げとばすように吐き出した声が店内に響いてしまった。


「どうしたんだよ…なんかあった?」


何の言葉も欲しくなかった。



「ごめん、ひとりにして」



やまやまは無言のままキッチンへ入っていった。
涙を堪えるのに精一杯のわたしは、何がこんなにも悲しいのか、苦しいのか延々と考える。
軽くついた一つのウソが、色々な人を振り回して傷つけてしまう事。
そして自業自得だけど、わたし自身も行き止まりになってしまった事。
今出来ることは、堪える涙が溢れないようにすること…
それだけだったのに。



落ちるときはどこまでも落ちていく…





「いらっしゃいませ」



カウンターにいたわたしは来客対応をする。



「会員カードお持ちですか?」



マニュアル通りのセリフに若い女の人は口を開いた。



「潤の彼女さんですか?」

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