おもかげlover...〜最上級に最低な恋〜

「は……い」


聞かなくてもわかる、目の前の女の人が誰か。
涙を堪える姿はまるで鏡越しの自分を見ているかのようだ。


「潤のこと…好きですか？」


震える声で問われて、彼女のキレイな涙を見ると同時に、わたしの頬にも涙が伝った。
抑えていたものが、ここへきて一気に流れていく。



「私は…私は潤のことが好きです」



震える声でハッキリと聞こえた純粋な想いに、息もできないほど苦しくなった。
両手で口と鼻を覆って、１歩２歩、後ずさりしながら



「ごめん…なさ…い」


と、しゃがみ込んでいた。


「私はずっと前から、好きでした。
なのに急に現れ…」


「仕事中だってわかんねぇの？」


見上げると、目の前にはやまやまの後ろ姿。



「そんな事、この子に言わないで直接水島くんに言えばいいんじゃねぇの？店利用するんじゃないなら、今すぐ帰って。」



コツコツとヒールの音が遠ざかっていく。
あまりにも純粋でストレートな想いを目の当たりにして、何も言えなかった。





涙が止まらないわたしの腕を掴み、やまやまはキッチンへ連れてきてくれた。


「どうしたんだよ？あんな女気にしないでほっとけ」


「違うの…あの子は間違ってないの。わたし、潤くんのこと好きじゃない…」


「いやいや、あの女がうざい事言ってきたからだろ？」


わたしは首を振りながら子供みたいに泣いた。
そして精一杯声を振り絞る。



「潤くんの他に、長く付き合ってる…彼氏がいるの…」



「はっ？」


「ウソついてたの…みんなに…ごめんなさい…本当に…ごめん…」



沈黙の中、すすり泣く声だけが響く。
もうこの職場にもいられなくなるかもしれない…そんな覚悟もしていた。