おもかげlover...〜最上級に最低な恋〜
そんな心を隠すように視線を上げると、そこにはやまやまの好きなゆうこりんの写真があった。
なんだか可笑しくて少しホッとした。

両手でふたつのコップを持って水島くんが戻ってきた。

「ブラックは無理だよね?」

なんて言いながら、砂糖とミルクをエプロンのポケットから出す。

狭いキッチンにふたり立ったまま並んでコーヒーを口に含む。


「コーヒーっていいよね」

たしなむ様にコーヒーをゆっくり口にする水島くん。

「コーヒー好きなんですね」

ありきたりな流れの会話でも、わたしには精一杯の言葉。

「うん。甘いものがほしい」

そんな風に言って優しい顔をする水島くん。





いつかの誰かのおもかげ。
なのに中身はまるで違う。
当たり前なのだろうけど不思議な感じがする。
コーヒーを口にしながら甘いものがほしいなんて、そんな事は絶対に言わない人だった。


< 32 / 187 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop