おもかげlover...〜最上級に最低な恋〜
わたしはことごとく会話が下手っぴで、全然話が広がることもなくて…お客さんの対応をしたり、ブースの掃除をしたり。
なるべくキッチンでふたりきりという時間を避けたい気持ちになる。
つまらない女だと思われてしまうのでは…なんて気にしてしまうから。




帰るお客さんのお会計をして、退店の手続きをした。

「ありがとうございました」

と見送ってぼーっとその場に立っていた。
キッチンには水島くんがいる。

さっきコーヒーを飲みながら好きなアーティストの話をした。
水島くんは音楽を聴くのが好きだと言うので、「わたしも!」
なんて言って一瞬盛り上がりそうだったのに…

お互いによく聞くアーティストに違いがあってなかなか話しが広がらなかった。
水島くんはYU--が好きだと言っていた。
YU--みたいな人が好きなのかなぁ…YU--かぁ。
頭の中はYU--でいっぱいになっていた。


「おーい、おーいってばー」

微かに聞こえてきた声の方を振り返ると、キッチンから少し顔を出して小さな声でおーいと手招きする水島くん。


多分何度か呼ばれていたんだと思う。
わたしの意識がYU--にいきすぎていたのか…
それにしても、何でそんなに?と思うほど小さな声。


そんな風に呼ぶなんて何かあったのかな?
なんて思って″あっ、はいはいはい″なんて急いで水島くんに近寄ると…

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