溺愛銃弾 ~フルメタル・ジャケット~
抹茶ムース色の着物に羽織姿の若旦那風と、ショート丈のジャケットに、白いクロップドパンツっていう、ちぐはぐな連れ合い。

それが手を繋いでシネコンの中を歩いてるとなったら、視線を浴びるのも当然と言えば当然の話で。しかもこの人は、たとえそこがどんな場所でも自分のしたいようにする人だった。

入場開始まで待ってる間も、近日公開の映画作品を流すモニター画面を鑑賞しながら、ぴたりと自分に寄り添って髪を撫でたり、キスを落としたりと忙しい。挙句の果ては心底嬉しそうに。

「カップルシートだから楽しみだねぇ」

「・・・陶史郎さん。映画を観に来たって忘れてる?」

小さく溜め息吐くと大真面目に返る。

「もちろんちゃんと憶えてるよ。暗闇でポップコーンと樹を摘みながら映画を観る会だよね?」

・・・・・・そんな会、発足させた憶えは無いんですが?
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