溺愛銃弾 ~フルメタル・ジャケット~
それから向かった花爛は、陶史郎さんの馴染みのお座敷料亭。若旦那風の彼は違和感なく溶け込んでる。

場にそぐわないのは自分の方で。迎えてくれた女将は表情には出さなくても、『この小娘』って眼が正直だ。

分別のある大人からしたら、歳も離れてるし、お人形ゴッコにしては戯れにもホドがあるだろうし。
 
「・・・どうぞ、ごゆっくり」

艶めかしい作り笑いを残して女将が襖の向こうに消えた。

「おいで樹」

上機嫌で陶史郎さんが向かいの自分を招く。

会席料理が並んだ高級そうな座卓を回り、隣りに座って彼が手にしたお猪口に冷酒を注ぐ。一息に飲み干すと、こっちに手渡して返杯。いつからか決まりごと。
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