溺愛銃弾 ~フルメタル・ジャケット~
2-1
「沢崎センパイ、ゴールデンウイークはどっか行きますー?」

「・・・どうかな」  

「ウチも全然ですよー。彼氏が出かけるの面倒がってサイテーですよ、もぉ」

パソコンのキーボードを叩きながら愚痴をこぼすのは、隣りの席の瀧口(たきぐち)佳織(かおり)。1つ下の後輩だ。

短大を卒業後、OA機器やオフィス用品関連の会社の管理課に勤めて3年目。従業員数15名ほどの零細企業でも、このご時世に横ばいの業績を維持できてるだけで堅実というべきか。

「きっとまた近場で終わっちゃうんだろーなぁ」

深い溜息をこれでもかと漏らす彼女。この時期の関心事は、だいたいが月末に待つ大型連休。

自分は仕事から解放されるくらいの認識で、あれこれ予定を立てたりはない。就職と同時に一人暮らしを始めてからは、滅多にしないカーテンの洗濯をしたり、そんな感じだった。

・・・ああでも。去年は陶史郎さんが山の別荘に連れてってくれたっけ。結局2泊したけど、あれは旅行になるのかな・・・。

今年はどうかも知らない。陶史郎さんは忙しい人だし、多分ヒマじゃないと思う。そう納得してキーボードのエンターキーを叩いた。
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