溺愛銃弾 ~フルメタル・ジャケット~
「今日は泊まってくからね。お風呂も掃除しといたよ?」

「・・・ありがと」

あんまり感情が表に出ない自分とは対照的に、陶史郎さんはいつもにこやかに笑う人で。

着流しによく似合う清潔感のある髪型、日本人らしいすっきりとした顔立ちは、老舗の呉服屋の旦那さんみたいにとても粋だと思う。一緒に歩くと注目されてる気もするし、・・・確かに男前で格好いいかもしれない。

毎日のようにここに来られるほどヒマじゃないと思うのに。いつの間にか合鍵作って、他人の家の夕飯を作るようになったし、・・・・・・そういう関係になってるし。

内心で小さく溜め息。割りとなし崩しだったような気もするけど。自分でイヤじゃないって思ってるところがどうなんだろうって。説明がつかない気持ちもある。

「今日のはどうかな?薄味にしたつもりだけどね」

「・・・ちょうどいい。陶史郎さん、料理ほんとに上手だね」

「うん。僕、家事は何でもするよ。樹はお嫁に来るだけでいいから、今すぐ結婚しよう?」

「・・・・・・すぐは無理」

一日一回は必ず交わされる、お約束のようなプロポーズとその返答。玉置さん曰く。

『・・・漫才ですか?』

・・・そうじゃないから困ってるんですが。
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