溺愛銃弾 ~フルメタル・ジャケット~
『樹』
ここに来てから名前を呼ばれる回数が多いことに気付く。傍にいても少し離れただけでも。迷子になるわけでもないのに、まるで首輪を手繰り寄せるように名前を呼ぶ。
『おいで』
・・・呪文みたいだなと思う。何も考えなくても、無意識に吸い寄せられるから。
服も食事もぜんぶ陶史郎さんが用意してくれて。自分はただ存在してるだけ。なのに彼は満足げに笑う。見返りもないのに溺愛されろとこの人は言う。・・・それだけは少し居心地が悪い。
ほとんどのモノを持ってるこの人に、差し出せるモノが思い付かない自分ができることなんて。
要らなくなったらすぐに消えるぐらいだ。
ここに来てから名前を呼ばれる回数が多いことに気付く。傍にいても少し離れただけでも。迷子になるわけでもないのに、まるで首輪を手繰り寄せるように名前を呼ぶ。
『おいで』
・・・呪文みたいだなと思う。何も考えなくても、無意識に吸い寄せられるから。
服も食事もぜんぶ陶史郎さんが用意してくれて。自分はただ存在してるだけ。なのに彼は満足げに笑う。見返りもないのに溺愛されろとこの人は言う。・・・それだけは少し居心地が悪い。
ほとんどのモノを持ってるこの人に、差し出せるモノが思い付かない自分ができることなんて。
要らなくなったらすぐに消えるぐらいだ。