溺愛銃弾 ~フルメタル・ジャケット~
「誰が何を言っても関係ない。僕は樹をお嫁にもらう、決めてるからね」

陶史郎さんが薄く笑った。

「言わせないだけの実力(ちから)はあるんだよ、これでも」

不敵な色を滲ませた眼差しが自分を捕らえてた。顎の下を掴まえられたまま、どう答えたらいいのかと。惑う。

この人は自分の一生を懸けて償いをするつもりだろうか。・・・それならもう。

結婚は本当に好きな人として欲しい。陶史郎さんが我慢したり、周りの人に悪く思われたりするのも嫌だ。陶史郎さんが幸せにならないのは・・・絶対に嫌だ。

父が亡くなって一人ぼっちになった・・・って、実感すら湧かせてもらえないほど。彼はがんじがらめに自分を掴まえて、心地よく束縛してくれた。息を吐く間もないくらい、陶史郎さんでいっぱいにされた。

ずっと陶史郎さん一色に染まってた気がする。陶史郎さんの笑う顔とキスと、抱いてもらってる時の熱と。失くなったら寂しいものばっかりもらった気がする。

これ以上もらっても、失くす時が痛そうだから。自分から手離してしまいたくなる。なんかもう今も少し痛くて・・・イヤだな。
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