溺愛銃弾 ~フルメタル・ジャケット~
仰向けの陶史郎さんは気怠い表情で一瞥だけして、「・・・そうだね」と素っ気ない。

理由を訊ねたかったけど、もっと怒らせたらと思ったら言葉が出てこない。俯かせるしかなくなって、どうしていいか分からずに悲しいのだけを(こら)える。

するとこっちに寝返りを打った陶史郎さんが、頭上で大きく溜め息を吐いた。
 
「樹は僕がいつか飽きると思ってたの?」

・・・・・・だって、それは。

「残念だったね。僕は沢崎にも約束したし、死ぬまでキミを放してなんかやらないよ」

思わず顔を見た。

あんまり冷たい光りに気圧されてその時は。父への義理を果たす邪魔をするなと、・・・拒むなと。そう聴こえて。
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