溺愛銃弾 ~フルメタル・ジャケット~
2-3
「樹、この皿そっちに運んで」

変わらない笑顔で陶史郎さんはご飯を作り。

「樹、裏の小川に行ってみる?」

変わらない笑顔で誘ってくれる。

でも。
おいで、とは言わない。


 
『結婚したくない』

昨日。自分がそう口にしてしまった時の彼は、目を見開いて固まり。

『・・・・・・そう』

儚そうに笑ったきり、何も無かったみたいに普通に戻った。

朝まで同じベッドで眠ったけど、抱き寄せられただけでキスも唇にされることはなかった。

優しいのも笑いかけてくれるのも全然変わらないのが、苦しくてしょうがない。どうしたらいいのか分からない。他にどう言えば良かったんだろう。考えても分からない。

自分が陶史郎さんと一緒にいたいと思う気持ちと、彼が思ってる気持ちは一緒じゃない。それがどうしてこんなに嫌だと思ったんだろう。
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