溺愛銃弾 ~フルメタル・ジャケット~
外に繋がる門は中から誰かが操作しないと開かない。飛び出したところで高い柵に囲われた森を彷徨うだけだった。ところどころ外灯も立ってたから、仄かな明るさを頼りに宛てもなく。

冷え冷えとした山の夜気が薄着の躰に染みこんでくる。自分で自分を抱くようにしながら、このまま外にいたら凍って死ぬかな、まあいいか・・・って。

半分は悟った気持ちになって。やがて大きな幹の根元に膝を抱えて座り込んだ。

自分がこんなに滅茶苦茶な人間だったとは思ってもなかった。陶史郎さんが自分を好きじゃないからって逃げ出してどうする。面倒臭い子供みたいで心底うんざりする。

罪滅ぼしに結婚しようとまで言ってくれた人に『したくない』なんて。傲慢にもほどがあったのに。

陶史郎さんは大人で優しいから同じように笑ってくれて。・・・怒る価値もないって思われたんだろう、きっと。  

きっとすごく嫌われた。・・・もう。傍にいる資格なんて・・・ないな。
 
思った途端、心臓がくしゃくしゃに締め付けられて息が出来なくなった。同時に目から零れ落ちたそれに自分が一番驚いてた。
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