溺愛銃弾 ~フルメタル・ジャケット~
父が死んだ時ですら流れることもなかった涙が、後から後から溢れて止まらない。今までどこに貯めてあったのか、止めようとしたって栓の在り処なんか知らない。

感情の洪水が一気に何もかも押し流してくみたいに。溺れそうで苦しい、苦しくて怖くて、何かが千切れて痛い。オネガイ、ダレカ、タスケテ・・・!

(くう)を仰いで、懸命に息継ぎする。泣き方がよく分からない。

陶史郎さんの傍にいたいって。こんなに胸が潰れそうなほど思ってるのに、自分で居場所を失くして。後悔したって遅いのに。どうしてもっと早く気が付かなかったんだろう。自分が陶史郎さんをこんなに好きだったこと。

呼吸が早くなる。動悸が。息継ぎ、できな。

憶えてるのはそこまで。
遠くで陶史郎さんの声を聴いた気もした。
靄がかってく意識の中で。



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