溺愛銃弾 ~フルメタル・ジャケット~
ふと目が醒めたら記憶があんまりに曖昧で。夢を見てたんだと思った。ベッドの中にいたし、裸のまま陶史郎さんの腕の中にいて、温かくて気持ちよかったから。

ひどく安心した気持ちになって彼の胸に顔を寄せる。するとすぐに切羽詰まったような声が自分の名を呼んだ。

「樹・・・っっ」

加減なしにきつく抱きすくめ、安堵の吐息を長く逃す陶史郎さん。

「心配させるんじゃないよ・・・。寿命が何年縮まったと思う」
 
「・・・ごめん・・・なさい」

いきなり黙って飛び出したことについては謝る以外ない。どんな風に言われても仕方がないと身を竦めた。

「・・・もう怒ってない。顔を見せて樹」

穏やかな声におずおずと。間近に陶史郎さんの顔があって、少し困ったような・・・弱ったような笑みを浮かべてた。
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