溺愛銃弾 ~フルメタル・ジャケット~
「玉置、アレ持ってきて」
犬に顔を舐め回される感じに口付けを落とされながら、ふいに陶史郎さんが。呆れなのか諦めなのか、黙って玉置さんがリビングテーブルの上に広げたのは婚姻届け。
「樹、名前書いて」
ペンを差し出し、にっこり無言で自分にペンを握らせる。
見れば『妻になる人』以外埋まっていて、『証人』の欄には玉置さんと知らない女の人の名前。
「樹のお母さんだよ」
「・・・え?」
聞き間違いかと隣りを仰げば、やんわり目が細まった。下の名前はそう言えば同じ。
「沢崎の葬儀のあと調べさせて、直接会いに行った。苗字も変わって違う家族のお母さんになってたけどね。・・・樹を忘れてないなら証人を引き受けてくれって頼んだら、その場で書いてくれたよ」
「・・・忘れて、なかった・・・?」
陶史郎さんが優しげに頷く。
どんな感情だったとしても、同情でも。母親だったことを憶えててくれたなら嬉しい。・・・素直に思えるくらいの時間が経った。なんだか鼻の奥がつんとした。
犬に顔を舐め回される感じに口付けを落とされながら、ふいに陶史郎さんが。呆れなのか諦めなのか、黙って玉置さんがリビングテーブルの上に広げたのは婚姻届け。
「樹、名前書いて」
ペンを差し出し、にっこり無言で自分にペンを握らせる。
見れば『妻になる人』以外埋まっていて、『証人』の欄には玉置さんと知らない女の人の名前。
「樹のお母さんだよ」
「・・・え?」
聞き間違いかと隣りを仰げば、やんわり目が細まった。下の名前はそう言えば同じ。
「沢崎の葬儀のあと調べさせて、直接会いに行った。苗字も変わって違う家族のお母さんになってたけどね。・・・樹を忘れてないなら証人を引き受けてくれって頼んだら、その場で書いてくれたよ」
「・・・忘れて、なかった・・・?」
陶史郎さんが優しげに頷く。
どんな感情だったとしても、同情でも。母親だったことを憶えててくれたなら嬉しい。・・・素直に思えるくらいの時間が経った。なんだか鼻の奥がつんとした。