溺愛銃弾 ~フルメタル・ジャケット~
「ただいま」

「おかえり樹」

モデルルームを丸ごと買い取ったみたいにコーディネートされた部屋。仕事から帰ってくれば、アイランドキッチンで料理にいそしむ着物姿の旦那様が。

「お風呂もすぐ湧くよ、奥さん?」

甘く笑う陶史郎さんのお尻に違うモノが生えてる。気がする。

玉置さんが溜息吐いてた。次は最凶の“親バカ”が誕生する、・・・って。



 
別荘から戻って一週間も経たないうち、アパートに帰ったら陶史郎さんから結婚証明書を手渡された。言い方を変えると。朝は沢崎樹だったのが、夕方には支倉樹になってた。

そのあとは何て言うか、ベルトコンベアに乗ってただ運ばれただけで。自分でしなくちゃならない名義変更の手続きくらいだ、面倒だったのは。

だから全然分かってない。支倉陶史郎という人の奥さんになった意味も。だから、陶史郎さんが教えてくれるまで訊かない。・・・ずるくても。
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