溺愛銃弾 ~フルメタル・ジャケット~
自分はどうすればいいんだろう。陶史郎さんの為にできることってなんだろう。言われたとおり、陶史郎さんのことだけ考えて生きてるけど、それだけじゃ足りない。・・・きっと全然たりない。

もっと急いで大人になりたい。足りないものを埋めたい。・・・もどかしい、とても。

なんだか急に情けなくなり「・・・ごめんなさい」と小さく。

「どうして樹が謝るの」
 
横にある顔が困ったように笑んだ。

「・・・何も返してないのに、陶史郎さんにもらうばっかりだから・・・」

「莫迦だねぇ、そう思ってるのは樹だけだよ」

きゅっと鼻を摘ままれて。

「樹を溺愛するのが僕の幸せなんだから、邪魔するんじゃないよ」

邪魔。って。ちょっと呆気に取られる。

「今度、同じこと言って謝ったらお仕置きだからね。どうしようかな。首輪で繋いで、一生ここから出さないで、お前から欲しがらせたいな」

不敵で妖しい、極上の微笑みを浮かべながら。
陶史郎さんの指先が、ゆっくり頬をなぞった。


「・・・俺無しでいられないくらい」





【完】




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