半人前霊能者シリーズエピソードZERO 幽霊様のお導き
***

「お父さん、おはよ。……例の見合いの話さ、断ってくれないかな」

 朝っぱらから炸裂した娘のワガママに、父は簡単に激怒した。

「落ち着いて話を聞いてって。託されちゃったのよ幽霊に。頭を下げてきたんだ、彼を幸せにしてあげて下さいって」

 私の言葉に、電話のむこう側がうっと押し黙った。

「部屋の中でずっと過ごした彼女だからこそ、彼がしっかりしてる人だって勧めてくれたのよ。年下だけどイケメンだし、心がねピュアな感じの人なんだ。間違いなく、お父さんもきっと気に入ると思う……。えっ!? 今晩自宅で、彼と一緒にいろって? 九州から、わざわざ意識を飛ばしてやって来るの!? 今夜は霊査でちょっと出かけなきゃならないから、別の日にしてちょうだいよ」

 娘同様に、ワガママな父に翻弄された。やっぱ親子なんだなぁ。

 そんなことをしみじみと思いながら適当に話を合わせて、さっさと電話を切る。

 ひとり娘が心配で今まで付き合ってきた彼氏と自分を比べては、難癖をつけていた父。三神さんを見たらそのイケメン具合に、間違いなく挫折感を味わうだろう。しかも真っ白なオーラを見たら、何も言い出せなくなると思われる。

 そんなことを名が得ながらくすくす笑いつつ、出勤の準備をしたのだった。
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